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千葉家庭裁判所松戸支部 昭和35年(家イ)81号 審判 1961年1月12日

申立人 中村喜代子(仮名)

相手方 中村利政(仮名)

主文

申立人と相手方とを離婚する。

当事者間に生れた長男正明(昭和三十三年二月○○日生)の親権者を申立人と定める。

理由

本件申立の要旨は申立人と相手方とは昭和三十二年六月二十日婚姻届をした夫婦であるが、相手方は性質怠惰で婚姻後二ヵ月で勤務先の○○食品株式会社を退職し、○○スプリング製作工場に就職したが同所も間もなく退めて、昭和三十三年一月頃無断家出をして所在不明となつた。その後同年二月頃横浜市菊名町から一度便りがあつたので手紙を出したところ同所も所在不明となつて手紙は戻されて来た。然るに昭和三十五年一月突然豊橋刑務所内の相手方から来信があり、三年の懲役刑を受けて服役中であることが判明した。申立人としては従来の経緯もありこのような刑罰を受ける相手方とは婚姻を継続する意思が全然ないので、この度離婚し当事者間に出生した長男正明の親権者を申立人と定めるよう調停を求めると謂うのである。

当裁判所において名古屋家庭裁判所豊橋支部に嘱託調査の結果相手方は昭和三十三年十二月十一日住居侵入強盗未遂罪により懲役二年六月、四年間執行猶予(東京地方裁判所八王子支部云渡)の判決を受け、更に昭和三十四年七月十四日賍物収受罪により懲役四月(岡崎簡易裁判所云渡)に処せられたため、前記執行猶予の取消決定を受け、現在豊橋刑務支所において服役中であり、且つ申立人との離婚を快く承諾したことが判明した。

以上の次第で相手方は当裁判所に出頭することができないため調停は成立しないけれども、当裁判所は双方のため衡平に考慮し一切の事情を観て、申立人と相手方とを離婚し長男正明の親権者を申立人と定めるのを相当と認め、家事審判法第二十四条によつて主文のとおり審判する。

(審判官 斎藤欽次)

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